話題のトクホビール「サッポロプラス」はヒットするのか?

   

いよいよトクホビール発売!気温が上昇し、ビールがおいしくなる季節ですね。
ビールは飲みたい、でも血糖値や中性脂肪の数値が気になる…そんなメタボ世代の方に朗報です。
今年のビール業界には、新たなノンアルコールビールが登場します。消費者庁によるトクホ(特定保健用食品)表示が許可された、「トクホビール」です。
すでにサッポロビールと、ヘルシア緑茶で有名な花王の2社が表示許可を受けています。

まず先陣を切るのは、5月26日にサッポロビールより発売される「サッポロプラス」です。

サッポロビール:ニュースリリース「SAPPORO+(サッポロ プラス)」新発売
http://www.sapporobeer.jp/news_release/0000021033/

ノンアルコールビールをさらに健康志向のユーザーに振り向けた商品ですね。
今回は、史上初のトクホビール「サッポロプラス」の発売に先駆けて、トクホビール誕生の背景とメーカーのマーケティング戦略について考察してみましょう。

トクホビール誕生の背景

トクホビール誕生の背景には、ノンアルコールビール市場とトクホ飲料市場の拡大があります。
2009年頃誕生したノンアルコールビールは、飲酒運転への規制強化、健康志向といった時代のトレンドから、ビール系飲料市場全体が縮小する中で売上を伸ばしてきました。
ノンアルコールビールは酒税がかからないので収益性が高いのもメリットですね。

トクホ市場の規模比較図

日本健康・栄養食品協会:特定保健用食品の市場及び表示許可の状況について~(2014年度)
http://www.jhnfa.org/tokuho-0.html

トクホ飲料市場は2012年の「トクホコーラ」が意外性からヒットしたことがブームの契機となりました。停滞気味だったトクホ市場が、飲料分野の成長から再び拡大方向を見せました。
トクホ食品全体の市場規模は6135億円(2014年、日本健康・栄養食品協会調べ)ですが、今やその4割近く(37.7%)が飲料(清涼飲料水)なのです。
トクホビールにメーカーの期待がかかるのも当然ですよね。

一度はトクホの申請を却下されていた?

さてトクホとは、特定の保健の効果が科学的に証明されている食品で、個々の商品ごとに消費者庁の許可が必要です。
ノンアルコールビールという商品ジャンルは、分類上はノンアルコールのビールテイスト飲料でも、味やパッケージは「ビールの代替品」です。この点が、未成年者が飲酒を始めるきっかけになるといった社会的見地から、トクホ表示は不適切だという答申が審査の過程で出てきました。
先行してサッポロビールと花王がトクホビールの申請を出していたのですが、当初はNGが出される可能性もありました。
結局、「未成年者に悪影響が出ない配慮が必要」という各種条件つきでのトクホ許可となりました。微妙なゴーサインという形ですので今後の経緯にも注意が必要ですね。(大手コンビニの中には、未成年者への対応を考え、トクホビールの販売を見合わせる動きもあるようです。)

サッポロと花王、マーケティング発想の違い

現在、トクホビールはまだ発売されていませんので、味や事例の評価はできませんが、企業としての考え方を読み取ることはできそうです。
先行するサッポロと花王について、現在わかっている範囲でブランディングやマーケティング戦略の違いを見てみましょう。

サッポロビール「SAPPORO+(サッポロプラス)」

サッポロプラス

サッポロビール:サッポロプラス商品情報ページ
http://www.sapporobeer.jp/sapporoplus/

史上初のトクホビールで先行利益を狙う「サッポロプラス」は、嗜好品としてのビール、「サッポロビール」という企業=商品ブランドへの自信をベースに、サブブランド「サッポロプラス」を表現しています。
健康的な白と緑の配色にはしていますが、缶には伝統的なサッポロの星がデザインされており、明治時代から続くモノづくりの精神は2015年も健在だという静かな主張が感じられますね。

ユーザーイメージとしては、「サッポロビールが飲みたい!」というメンタリティが第一義で、でも血糖値が…健康が…とためらう気持ちが浮かぶ、ビール好き、特にサッポロビールファンであるメタボ予備軍の男性でしょうか。

また今回、サッポロビールは飲む「シチュエーション」に注目しているようです。
サッポロビールの調査によれば、ノンアルコール飲料ユーザーのおよそ4割が食事と一緒に飲むと答えているそうです。ですので、商品提案には、食事に「プラス」することで食事の糖の吸収をおだやかにする点を強調しています。
商品名の「プラス」に、食物繊維の働きで健康にポジティブという機能の印象と、食事とのコンビを組むノンアルコールビールという状況の印象、二つの意味合いを含ませているのですね。
こうなると気になるのは味ですが、「食事と一緒に楽しめる、すっきり爽やかな味わい」のビールテイストだそうです。ぜひ飲んでみたいですね。

 

花王 「ヘルシア モルトスタイル」

花王 ヘルシア

花王:ヘルシア
http://www.kao.co.jp/healthya/

一方、異業種のダークホースである花王のトクホビール「ヘルシア モルトスタイル」は、まだ販売時期などは不明です。
ただ「ヘルシア」ブランドで商品開発を進めていることは間違いないようです。
                
ヘルシアは、健康志向というニーズを汲み取り、トクホ飲料の総合ブランドとした、顧客視点でのカテゴリ-ブランディングです。「緑茶」さらに「スパークリング」「コーヒー」など、飲料の各分野に貪欲に参入しています。カテゴリーブランディング戦略の成功事例といっていいでしょう。
マーケティング力のある花王が、あえて社名よりも「ヘルシア」というカテゴリーブランドの方を大きくプロモーションしてきた結果ですね。

ヘルシアブランド飲料は、嗜好品というより、健康維持を目的として理性的に選ぶ商品だと考えられます。現在のサイトコンテンツも「健康ナビ」などかなりヘルスケア目線の内容が多いですし、広告も、イメージより健康への効果をわかりやすく打ち出す戦略をとっていますので、「ヘルシア モルトスタイル」にも踏襲されるでしょう。
あくまで健康飲料であるとの姿勢から、表現やパッケージデザインなどは、ビールの代替品には見えない打ち出し方をする可能性もありますね。

ユーザーイメージとしては、サッポロプラスのユーザーよりストイックな人物が想起されます。
健康に課題を抱え、嗜好品としてのビールへの興味がより薄いユーザーとなりますので、はたしてその層があえて「ヘルシアのビール味」を求めるか?という疑問が少しあります。
ただし、茶カテキンなどヘルシアの効果を実感している層、ヘルシアブランドを理性的に選択する層が育っている点も見逃せません。一貫したカテゴリーブランディングでトクホ飲料市場を拡大してきた成果が、どこまで影響を及ぼすのか注目したいところです。

ターゲットは、トクホビール市場としてはメタボ世代の男性がメインとなるでしょう。
ただ、「ヘルシアコーヒー」については、一般的な缶コーヒーより女性の購入比率が高かったそうです。もともと女性に強い企業ですし、ビールメーカーとの差別化としても、ダイエットに敏感な女性にプロモーションをかけてくることも考えられますね。

同じ商品ジャンルを扱っていても、企業によって考え方や特徴の違いがあります。マーケティング戦略にも個性を活かす視点が大切です。
ビールを知りつくしたサッポロと、トクホ飲料を知りつくした花王のそれぞれの展開が気になるところです。
今後、他メーカーの参戦も予想されますので、トクホビール市場に注目していきましょう。

まとめ

  1. ノンアルコールビールのさらなる差別化でトクホビールが誕生した
  2. 「嗜好品:ビール」発想のサッポロと「健康飲料」発想の花王
  3. 同じ商品ジャンルでも、企業個性を活かしたマーケティング戦略が大切

ビール市場は、第三のビールやノンアルビール、糖質ゼロ、さらにトクホ…などと、種類が多すぎてパイの食い合いをしてしまいそうな気もします。
それでも、健康というキーワードを軸に、各メーカーは商品提案をし続けています。本来のビールが苦戦している中で、アルコールを抜いた商品に活路を見出していくのは、逆転の発想とも言えますよね。
さらなる差別化商品として生まれたのがトクホビールです。今後は異業種からの参入となる花王の動向も興味深いところです。

今回トクホビールで先行するサッポロプラスは、ノンアルコールビールを支持している40代を中心に、話題としてとりあえず飲んでみる層も取り込んで、ある程度のヒットは見込めるのではないでしょうか。トクホビール、一度は飲んでみたいですね。

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